皮膚の病気にかかってしまうワンちゃんは多いです。
中には、完治が難しいと言われている「アトピー性皮膚炎」にかかってしまう子もいます。
皮膚の病気は治療が長引くことも多く、ワンちゃんにも飼い主にも負担がかかります。
だからこそ、皮膚病についての正しい知識を身に付け、それぞれの皮膚病に合った対処方法をしていく必要があります。
正しく対処することで、皮膚病の症状が軽くなることや、場合によっては治ることもあるんです。
今回は、ワンちゃんの皮膚病について解説します。
目次
ワンちゃんに多い7つの皮膚病
1.ノミアレルギー
ノミが寄生してしまうことで、皮膚にかゆみが起こります。
2.疥癬(かいせん)
ダニが皮膚に傷をつけて寄生してしまうことで、かゆみが起こります。
3.犬毛包虫症(いぬもうほうちゅうしょう)
毛包(毛穴)にニキビダニか寄生してしまうことで、かゆみが起こります。
4.膿皮症(のうひしょう)
皮膚が細菌に感染してしまうことで、かゆみが起こります。
5.マラセチア
マラセチアという真菌に感染してしまうことで発症します。
6.食物性アレルギー
アレルギー反応を起こしてしまう食べ物により、かゆみが起こります。
7.アトピー性皮膚炎
生活環境の中にある様々な物質に対してアレルギー反応を起こしてしまいます。
完治できる皮膚病
上記の1~6の皮膚病に関しては、正しい対処方法で完治させることができます。
そのため、かゆみ止めを使用するのではなく、かゆみの原因を排除することで完治を目指します。
1~3の「ノミ」「ダニ」「毛包虫」は駆除剤を使用することで、原因となる寄生虫を排除します。
飲むタイプや皮膚に塗るタイプなどのノミ、ダニ予防薬があるため、しっかり対策しましょう。
※必ず動物病院で処方されたものを使いましょう。ペットショップなどで販売されているものには効果がほとんどありません。
4~5の細菌感染による皮膚病に関しては獣医さんの診断により、抗生物質や抗真菌薬を処方してもらい、ワンちゃんに飲ませましょう。
また、抗菌シャンプーといった薬用シャンプーで体を洗ってあげるのも効果的です。
6の食物アレルギーは、食物アレルギーかどうかを見極める必要があります。
そのため、病院で処方される特殊な療法食と水のみを2ヶ月間与え、かゆみが起こるかどうかを見極めます。
これでかゆみが起こら無くなれば、食物アレルギーだと判断され、そこから原因となる食品をつきとめていきます。
ワンポイント豆知識
療法食とは
アレルギー反応が起こらないように、たんぱく質を特殊加工したフードです。
また、今まで食べたことないであろうたんぱく質を使用することもあります。
一般的なペットショップで販売されている「低アレルギーフード」とは異なり、アレルギー反応を完全に起こさないことが目的です。
これ以外ならアトピー性皮膚炎の可能性が
上記の1~6の対処方法や治療を行ってもかゆみが改善しない場合は「アトピー性皮膚炎」の可能性が高いです。
アトピー性皮膚炎は環境中の様々なアレルゲン物質によりアレルギー反応を起こしてしまう病気です。
環境中というのは、生活している環境のことです。
空気に含まれるハウスダストや花粉、ダニやノミに対してアレルギー反応を起こしてしまうため、原因を排除するのは難しいです。
また、遺伝的に皮膚の潤いが足りていなかったり、皮膚自体が弱かったりする子もいます。
アトピー性皮膚炎は、生活環境にアレルゲンがある場合や、遺伝的な体質によりアレルギー反応が起こる場合があるため原因を排除しにくく、完治が難しいと言われています。
遺伝的にアトピー性皮膚炎になりやすい犬種
・柴犬
・シー・ズー
・ゴールデン・レトリーバー
・ラブラドール・レトリーバー
・シェットランド・シープドッグ
・ウエストハイランド・ホワイトテリア
・ダルメシアン
・ボストンテリア
・ブルドッグ
・フレンチブルドッグ
※上記の犬種以外でもアトピー性皮膚炎を起こしてしまう可能性はあります。
アトピー性皮膚炎の治療
アトピー性皮膚炎は完治が難しいと言われていますが、適切な治療を行うことで、症状を軽くすることができます。
愛犬の苦痛を減らしてあげるためにも、あきらめずに治療を行いましょう。
ステロイド
ステロイドはアトピー性皮膚炎を根本から治すことが目的ではなく、あくまで一時的な対症療法です。
かゆみと炎症を抑えるお薬で、投与をやめれば再発します。
花粉などの、季節限定で起こるアレルギー反応に対して使われることが多く、ハウスダストなどの1年中起こるものに対して、長期間投与してしまうと副作用のリスクがあります。
副作用には食欲増進、水の飲みすぎによる頻尿、胃腸や肝臓が荒れてしまう、ホルモンバランスの乱れなどが挙げられます。
また、免疫力の低下も起こりやすく、合併症を引き起こしてしまう可能性もあります。
正しく使えば効果のあるお薬なため、獣医さんと計画を立てて、副作用を最低限に抑えましょう。
抗ヒスタミン剤
かゆみの元の1つ、ヒスタミンのはたらきを抑える効果があります。
単独で使用しても効果が表れにくいため、補助的に使われることがほとんどです。
軽度のアトピー性皮膚炎に対して使用されます。
免疫抑制剤
アレルゲンに対して過剰に反応してしまうことで起こるアレルギー反応を、免疫力を抑えることで軽減することが目的の治療法です。
皮膚のかゆみを抑える効果が期待できるため、体全体に作用してしまう、ステロイドよりも副作用が起こりにくいと言われています。
ただし、意図的に免疫力を下げてしまうため、合併症が引きおこる可能性があります。
減感作療法
現在行われているアトピー性皮膚炎の治療法の中で、アレルギー体質を根本的に改善できることが期待できる治療法です。
アトピー性皮膚炎の原因であるアレルギー物質を避けるのではなく、逆に体内に注入します。
アレルギー物質に慣れさせることで、アレルギー反応が起こらないようにします。
治療の開始前には、アレルギー物質を特定する必要があり、特殊な検査を行います。
最初の1ヶ月ほどは2日に1回ほど、頻繁に注入を行い、慣れてくれば飼い主が家で注入を行います。
手間がかかるうえに高額になる場合が多く、また、アレルギー反応が強ければ治療を断念する場合があります。
犬インターフェロン療法
最先端のアトピー性皮膚炎の治療法です。
インターフェロンとは、動物が体内に侵入した病原菌やウイルスに対して分泌するたんぱく質のことで、免疫機能や炎症を抑える効果があります。
犬インターフェロン療法では、アレルギー体質の改善を目的としたインターフェロンを注射することで、アトピー性皮膚炎を緩和する効果があります。
インターフェロン自体は体に元々存在する成分なため、安心安全に治療が行えます。
また、かゆみを抑えるだけでなく、かいてしまった傷、皮膚の赤みや脱毛を抑える効果もあります。
治療開始から1ヶ月ほどは頻繁に注射する必要がありますが、効果が出てきたら徐々に感覚を開けていきます。
アトピー性皮膚炎の治療法一覧
治療法 | メリット | デメリット | 有効性 |
---|---|---|---|
ステロイド | ・即効性がある ・有効性が高い ・比較的安価 | ・副作用のリスクが高い ・効果が続かない | ほぼ100% |
抗ヒスタミン剤 | ・副作用が少ない ・比較的安価 | ・効き目が弱い | 30% |
免疫抑制剤 | ・副作用が少ない | ・免疫力が下がる | 70% |
減感作療法 | ・根本的な治療が可能 ・副作用が少ない | ・検査が特殊 ・施設が少ない ・手間がかかる | 70% |
犬インターフェロン療法 | ・副作用が少ない ・アレルギー体質改善の可能性が | ・手間がかかる | 70% |
治療のし過ぎも良くないかも
アトピー性皮膚炎のかゆみを抑えてあげれば、愛犬の苦痛も和らぎます。
しかし、過剰に治療をしてしまうと、お薬の副作用や治療自体の大変さから、愛犬の体に負担がかかってしまうこともあります。
症状の改善を過剰に求めるのではなく、アトピー性皮膚炎という治療の難しい病気を理解して、上手に付き合っていくこともワンちゃんの幸せに繋がるのではないでしょうか。
皮膚病を軽くするためにできること
皮膚病には病院での治療はもちろん必要です。
しかし、治療以外にも普段の生活を見直すことで、症状を軽くすることができるかもしれません。
定期的にシャンプーを
愛犬の体についたアレルギー物質を洗い落とすには、シャンプーが効果的です。
ワンちゃんの肌は人間よりもデリケートです。おまけに皮膚病を持っている場合、市販のシャンプーは刺激が強すぎます。
獣医さんと相談して、愛犬の肌に合ったものを選ぶと良いでしょう。
シャンプー後の保湿も大切です。
ただし、洗いすぎも良くありません。
皮膚の油分が落ちることで、皮膚の乾燥からかゆみが起こることもあります。
月に1~2回を目安に、愛犬と相談しながらシャンプーを行いましょう。
お家のお掃除も大切
ハウスダストやノミ、ダニにの死骸よるアレルギー反応を予防するためにはお掃除が大切です。
愛犬のためにもこまめにお掃除をしましょう。
また、愛犬のシーツやベッド、ケージなどもきれいに保ってあげましょう。
ごはんにも気をつかって
安価な市販のフードは、アレルギー物質を多く含んでおり、ワンちゃんの体に合わないことがあります。
安さにひかれてごはんを選んでしまうと、皮膚病の発症や、悪化に繋がります。
できれば、動物病院で処方してもらえる、優れた原料のフードが望ましいです。
まとめ
アトピー性皮膚炎をはじめとする皮膚病は、ワンちゃんの病気の中でも特に多い病気なのではないでしょうか。
中には、治療が長引き、費用がかかってしまう場合もあります。
治療法も様々で、それぞれにメリット、デメリットがあります。
皮膚病の治療には根気がいるんです。
獣医さんとしっかり話し合い、的確な治療を行えるようにしましょう。
愛犬のために、絶対にあきらめないでください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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